2013年度 活動方針 @秋田県、成瀬ダム総会 議案書

 

総会報告

 5月11日に2013年度JELF総会を秋田県東成瀬村で開催しました。出席した会員は21名、委任状が327名から提出され、成立しました。
  総会では籠橋代表のあいさつのあと議案について事務局から説明がありました。討論では、憲法改正をめぐる動向、安倍内閣のもとでの環境に関する政策やTPPなどについての発言がなされました。
  原発をめぐっては、福島原発事故の被害者が東電や国を相手とした訴訟について実働弁護士の拡大を要請する発言、原発廃炉・運転差止めを求める運動や訴訟について都市部での取り組みの強化が必要との発言、また原発メーカーの責任を問う運動についての報告などがなされました。
  公共事業に関しては、官僚支配の下、公共事業の全面展開が進められており、各地での粘り強い運動を構築していくことが必要との意見が交わされました。
  そのほか、シロクマ裁判やジュゴン訴訟などJELFが当事者となっている訴訟についての報告、弁護士会員を拡大していくことが確認されました。
  総会は代表に籠橋隆明、副代表に池田直樹、市川守弘、事務局長に樽井直樹をそれぞれ再任しました。

 

2012年度、活動報告

1/14  JELF原発問題シンポジウム
1/15  JELF拡大理事会
     JELF視察〜福島原発事故被災地@いわき市
2/ 4   環境法の論点表 検討会議in 東京&スカイプ
2/14-2/21  地球温暖化シロクマ弁護団、ソロモン視察
3/14   温暖化シロクマ公害調停、第二陣(ツバル原告団)申立
3/17   法科大学院生対象・環境法の学習会@大阪
      法科大学院生対象・環境法の学習会@東京
4/7       環境法の論点表 検討会議in 東京&スカイプ
5/11     温暖化シロクマ行政訴訟、提訴
5/12     JELF 原発問題シンポジウム
5/13     JELF 総会&福井県敦賀市 原発立地視察
7/ 7     法科大学院生対象・環境法の学習会@大阪
8/5      法科大学院生対象・環境法の学習会@東京
8/24     法科大学院対象・環境サマーセミナー(日弁連)@東京・上智大
               →交流会(公害弁連、ゴミ弁連協賛)開催
10/14   新66期合格祝賀記念勉強会@東京
11/ 7    新65期合格祝賀記念勉強会@福岡
11/10   新66期合格祝賀記念勉強会@名古屋
           新66期合格祝賀記念勉強会@大阪
12/29   JELF LS生向け答練習会

 

2013年度、活動方針

第1 環境問題をめぐる情勢


1 安倍自公政権の下での政治状況

 2012年度の総会では、野田民主党政権が公共事業、地球温暖化、基地・平和問題、原子力政策といった最も重要な争点について著しい後退を続けている混迷した政治状況下にあって環境問題に取り組むに当たっては、原点に戻って訴訟、運動を展開することが求められることを確認した。
 2012年12月の総選挙において自民党が地滑り的な勝利を収め、安倍内閣が発足した。
安倍内閣は、いわゆる「アベノミクス」の3本の矢の一つとして「機動的な財政政策」を掲げ、「国土強靱化」の名の下で大型公共事業を進めようとしている。エネルギー・環境政策の方針について2012年夏の国民的議論で「原発ゼロ」を求める国民の声が圧倒的多数を占め、民主党政権も不十分ながらも「2030年代の原発ゼロ」という脱原発方針を掲げていたことについても、「ゼロベースで見直す」ことを表明し、原発の再稼働、新規建設にすら踏み出そうともしている。普天間代替施設である辺野古基地建設についても、安倍政権は積極的に推し進める姿勢を示し、沖縄県知事への埋立申請を強行した。また、安倍政権はTPP(環太平洋経済協力協定)への参加を表明したが、関税の全廃と非関税障壁の撤廃を目指すTPPに参加することで農業への打撃、ISD条項(投資家対国家条項)などを利用した環境規制への攻撃などによって環境問題の後退が懸念される。京都議定書からの脱退を受けて地球温暖化対策は空白状態にあり、経済財政諮問会議では地球温暖化ガスの25%削減目標についてゼロベースで見直すことが提案されている。
 このように、安倍内閣の発足によって環境政策の分野でも以前の自民党政権下の政策に完全に復帰するという事態が生まれている。
 また、安倍首相は憲法改正を目指しており、今夏の参議院選挙では改憲要件の緩和を内容とする96条の改正が争点となることも予想される。自民党が2012年4月27日決定した「日本国憲法改正草案」は基本的人権を「公益及び公の秩序に反しない」範囲で認める(13条)、表現の自由については「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行」う「ことは、認められない」とする(21条2項)など、立憲主義とは相容れないものである。同草案には「環境保全の責務」(25条の2)が盛り込まれているが、環境条項が人権保障と民主主義を弱める憲法改悪の目くらましとされることを認めることはできない。
 JELFは、自民党政権下で、環境保護に対立する政策が全面的に展開される可能性が高い情勢の中で、改めて、無駄な公共工事が自然生態系や地域のコミュニティーを破壊するものであること、電力会社などエネルギー部門に排出者としての責任があること、気候変動問題は国際的な不公正の問題でもあること、基地問題は騒音、水質汚染、自然破壊、地域文化の破壊など基地に伴う深刻な人権問題であり、環境問題であること、原子力に依存しないもう一つの社会をつくることが焦眉の課題であること、そして人々の権利と憲法を擁護することを原点として、環境問題に取り組むことを決意する。
 JELFは、権利、公正といった憲法上の原則を提示して環境問題の取り組むべき指針を提示していく。

2 東日本大震災

1) 2011年3月11日に日本の太平洋三陸沖を震源として東日本大震災が発生した。マグニチュード9.0の震度及び地震後の巨大津波が東北地方太平洋岸を中心に未曾有の被害を生んだ。発生から2年以上が経過しているものの、被災地での復旧・復興は遅れている。 東日本大震災の教訓を踏まえ、私たちは再度日本の社会のあり方を見直し、あらたな地域づくり、まちづくりのあり方について提起していかなければならない。

2) JELFはこれまで、「持続性」の考えを重視して活動を展開してきた。
生物の多様性にあっても、コミュニティーの持続性を実現することが生物の多様性を維持することにつながるとの考えのもとで運動を展開してきた。廃棄物処理についても、循環社会の実現のためにはコミュティーそのものが廃棄物を抑制するとともにコミュニティーそのものが循環社会を実現することが必要であることを提起してきた。都市にあっては、コンパクトシティの考え方から歩いて住める都市を検討した。
その他、JELFの政策は常にコミュティーの持続的な発展の考えを中核にしたものであった。

3) JELFは、東日本大震災からの復旧・復興に関しても環境問題の視点から意見を持ち、行動することが求められる。

 

第2 各分野のとりくみについて

1 原子力問題
1) あらためて思い起こすと、2年余り前、福島第一原発の事故が発生し、私たちは、大きな衝撃を受けた。同原発では、原子炉や使用済み核燃料プールの冷却機能が働かなくなり、1〜3号機ではメルトダウンが発生、1、3、4号機の建屋では大規模な爆発が起きた。放射性物質が大量に空気中に放出され、何十万という人が住み慣れた地元からの避難を余儀なくされた。
 あれから2年以上が経過した今も、福島から避難し帰還できていない住民はなお15万人を超えると言われている。また、福島第1原発では、つい先日も、使用済み核燃料の貯蔵プールの冷却システムが一時停止するトラブルが発生し、原発事故は今なお到底「収束」したとは言えない状況にある。
 しかし、この国はそんなことを一切忘れてしまったかのようである。
 2012年末の選挙で大勝をおさめ誕生した第二次安倍政権は、経済最優先の政策を掲げ、先の民主党政権中に再稼働を開始した大飯原発に引き続き、他の原発の再稼働を進めようとしている。それどころか、安倍首相の「お膝元」である山口に建設が予定されている上関原発に関する同人の近時の予算委等での発言からすれば、新たな原発の設置をも辞さない態度であることは明らかである。
 更に、安倍政権は、現在、はっきりとした右傾化の兆候を見せており、憲法96条改正、そしてその背後にある9条改正を目論んでいると言われるが、そのことからすれば、核保有の軍事的意味も、原発再稼働・再建設の動きと無関係とは言えない。
 しかし、3.11から2年余りしか経っていないのに、原発の再稼働、更には新たな原発の建設をもしかねないという、言わば暴走する現政権に対し、国民から怒りの声がもっと上がらないのはなぜか。この国の国民の「無関心」「周りの空気にあわせる」風潮が、この原発問題に象徴的に現われているのではないだろうか。
そして、今年4月には、大阪地裁で、関西電力大飯原発3、4号機の運転停止を求めた仮処分の申立が却下された。このように、司法も、現段階では、3.11以前と変わらず、その役割を十分に果たすことができていないと言わざるを得ない。
 このような状況下で、JELFが果たすべき役割は何なのか、再確認する必要がある。

2)JELFは、多くの環境団体とともに、2年前の福島原発事故の被害賠償に取り組むとともに、二度と同じ過ちを繰り返さないため、全ての原発の即時廃止を求め、新規建設を許さないための運動を展開していく。

@ 福島第一原発事故の被害の全面賠償を求める訴訟及び運動を全面的に支援し、政府に対し被害者を救済する立場に立った施策を要求する。
A 原子力開発が持続社会の形成にはつながらず、人の生存と、環境に大きな危険をもたらす環境問題としてとらえ、環境問題に相応しい取り扱い、すなわち正確な情報開示と、原発の廃止を求めていく。
B 原子力発電所の停止、廃炉などを求める運動、特に原発訴訟の連携強化を図る取り組みを行う。

 

2 気候変動

1)情勢
 気候変動問題を取り巻く状況は、さらに厳しくなっている。
 2012年12月にカタールで開催されたCOP18で、日本は京都議定書の枠組みから離脱し、この春、政府はCO2排出が最も多い石炭火力発電を推進することを明言した。
 原発問題を盾に、気候変動対策はほとんど顧みられず、またそのことに対する批判の声さえかき消されているのが現実である。

2)シロクマ裁判の状況
 10電力会社及び電源開発を相手方としてCO2排出削減を求めた公害調停の申立ては2011年の第1陣、昨年の第2陣ともに却下されたことから、同年5月11日、却下処分取消訴訟を提起した。
原告は、シロクマ、JELF、ツバルオーバービュー、ツバル人18名を含む48名(シロクマは分離の上、却下)。
口頭弁論は、9月26日に第1回、本年1月30日に第2回、そして、4月24日に第3回を終えたところである。最大の争点は、当初より、気候変動が環境基本法における「公害」への該当性及び調停による解決可能性である。
 弁護団から5名は、今年2月にツバルにおいて6日間に渡る被害調査を敢行し、原告のうち11名の聴取り調査の結果を公害に係る具体的被害の証拠として提出した。気候変動の影響を真っ先に受けると言われているツバルの、島中が海水で溢れかえる現実を目の当たりにして、気候変動対策は一刻の猶予も許されないことを実感した。

3)今後の展開
 持続可能な社会を実現するためには、脱原発を口実に気候変動対策を後退させることがあってはならないのは言うまでもない。
 そこで、JELFとしては、シロクマ裁判に全力を尽くすとともに、NGO等との連携をさらに強化し、運動を活発化させ、気候変動対策の緊急性を地道に訴えていく必要がある。産業界と癒着する政治や行政が脱原発への民意を逆手に取って、我々の社会を後戻りできない破滅的な道へ追い込もうとしている現在、まさに法律家の役割は重要となっているのではないだろうか。

 

3 公共事業


1) 2009年に政権に就いた民主党は、公共事業改革を試み、各種ダム事業等の停止が行われたが、整備新幹線、高規格道路、八ツ場ダムなどの事業が推進されることになり、政権交代による公共事業改革は成功せず、そして再び政権は自民党に移り、民主党政権化で停止していた公共事業も再び動き出す流れとなっている。
 そして2012年、自民党は「10年で200兆円」という事業費の目標を掲げた「国土強靭化基本法案」を国会に提出し、公明党が骨子をまとめた法案も「10年で100兆円」をうたっており、「防災・減災事業」と看板を付け替えて、公共事業を推進しようとする動きが見えている。同法案は、5月中にも再度国会に提出される見込みである。現在の人口減少、財政状況の厳しさ、既設施設の老朽化と施設の更新費用の増大、緑地の継続的な減少といった問題がある中で、公共事業を推進していこうとする動きには環境、及び国民経済に与える影響を無視している点で大いに問題がある。

2) 以上のような公共事業の過剰な推進を規制し、あるいは問題点をチェックするための法的な仕組みは、現状では極めて不十分である。
 まず、行政自身による規制の仕組みとして、政策評価法による事業再評価、審議会などへの諮問の手続きがあるが、現在のところ機能はほとんどしていない。
 次に、国会や自治体における予算審議でのチェックが考えられるが、予算審議は一括審議が多く、特定の事業に対するチェックが十分行われていない。
 次に、国民自身の手によるチェックの方法としては、まず情報公開手続きが考えられるが、温暖化防止情報公開訴訟の事例のように、非開示情報に該当すると判断されて必要な情報公開が阻まれることも多い。また、環境アセスメント手続きで意見を述べる方法が考えられるが、法律によるアセスの手続きは公聴会の制度がなく、条例でもその点の制度整備が不十分な事例が多いなど、実効性あるチェックを行えるだけの仕組みが整っていない。
 次に、各種の行政訴訟・住民訴訟等による問題ある公共事業の差止めを求める動きは続けられており、泡瀬訴訟、鞆の浦景観訴訟、よみがえれ有明訴訟など事業の推進を食い止める画期的な判決を得られる事例も見られるようになっている。しかしながら、原告適格や行政裁量論の壁の厚さから、成果が得られる事案は依然として少なくとどまっているし、泡瀬の事案では事業の計画内容の変更がされたうえで再度工事が始まってしまうなど、一度勝訴しても完全に公共事業を食い止めるまでにはなお至らない事案も生じている。

3) 以上のような現状を踏まえ、必要性がない公共事業を実効的に規制するためには、事業内容のチェックのための仕組みを抜本的に改正することが必要である。そこで、日弁連環境委員会では、公共事業改革基本法の試案を作り、より効果的なチェックが行われるための提言を行っている。このような抜本的な改革を求める法改正を求めつつ、個別の現実に生じている問題への対処として、裁判等の法的手続きに積極的に取り組み、原告適格や行政裁量論の壁に立ち向かい、また仮の義務付け・差止の訴え及び執行停止等の手続きを活用するなどして、事業を早期に停止させるための試みを続けていくこともまた、引き続き必要である。

 

4 生物多様性に関する問題


1)2012年度の取り組み

@ 生物多様性条約第11回締約国会議(CBD COP11)への参加
 2012年10月、インドのハイデラバードで開催されたCBD COP11へ、会員及びJELF事務局が参加した。事務局の参加により、国内外の環境NGOとJELFの結びつきが強化された。

A 日弁連の人権擁護大会のシンポジウムが、沿岸域の保全・再生のための法制度をテーマに開催され、多くの会員が企画に参画した。
 英国仏国の先進的な取り組みの紹介はもとより、三重県英虞湾における漁民が中心となって取り組んだ干潟再生の取り組みが、参加者に共感をもって受け止められた。

B ラムサール条約第11回締約国会議にも、会員が参加している。

 

2) 2013年度の活動方針

@ 開発行為に対する「回避→低減→代償措置」の提唱
 我が国の生物の多様性減少の大きな要因として、開発行為による自然破壊があげられる。
開発行為による生物多様性の破壊、減少については、ノーネットロス原則*1に従い、まず、影響の回避、低減が図られなければならない。しかしながら日本では、本来、回避、低減の検討の後に検討されるべき「代償措置」について、、来的意味合いから離れ、代償段階のみがミティゲーションであるかのように宣伝されている節がある。
 JELFでは、日弁連とともに、代償ミティゲーションの考え方について、ノーネットロス原則との関係を明らかにしながら、どうあるべきかについて議論を深め、発信していく。

A 無駄な開発行為からの生物多様性の影響の回避、低減
 JELFでは、ダム、原発など大規模かつ無駄な公共工事(開発行為)に対しては、裁判等を通して、開発行為の差し止め(回避)ないし計画変更(低減)を迫っていく。この場面では、とりわけ、行政訴訟における原告適格・処分性の拡大、裁量統制に関する判例の前進を勝ち取ることが重要な課題である。

B 開発行政に対する住民参加の推進
 泡瀬干潟訴訟、よみがえれ有明訴訟などによって、公共工事の民主的統制が、生物多様性保全に不可欠な関係にあることが明らかにされてきた。JELFでは、生物多様性保護政策に対する市民参加のシステムの実現をめざして政策提起を行っていく。

C その他、生物多様性国家同戦略を担保する法的統制、環境アセスの実効性の確保をめざして政策提起を行う。また、近時頻発している、開発推進側によるいやがらせ訴訟に対する、対抗運動を展開する。

 

5 沖縄の米軍基地と環境問題

1) 情勢と課題
 2012年12月に自民党が政権復帰したことにより、米軍基地、特に辺野古基地建設について情勢を大きく変わり始めた。防衛省沖縄防衛局は2013年3月22日に、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とする同県名護市辺野古沿岸の公有水面埋立承認申請を沖縄県に対し行った。沖縄県知事が承認とするか不承認とするかは不透明ではあるが、仮に沖縄県知事が不承認とした場合であっても、政府は地方自治法に基づく代執行の手続を進めると考えられ、早ければ2013年11月ころに政府が辺野古基地建設工事に着工可能となる可能性がある。この工事着工を阻止するため、JELFは、原告として、アメリカの弁護士と協力し、政府が当該工事を着工するために必要な米軍の立入許可の差止め手続(インジャンクション)をアメリカの裁判所において行う予定である。
 辺野古沿岸部においては、新基地建設のための環境影響評価が行われたが、その内容は環境アセスの名に値しないものであり、むしろ、辺野古沿岸部での基地建設が重大な自然環境破壊をもたらしかねないことを示している。辺野古周辺の住民ら約620人は、かかる環境影響評価(アセスメント)が違法だとして、アセスのやり直しを国に求め訴訟を提起したが、那覇地裁はアセスの違法性の判断に踏み込まず、2013年2月20日に住民らの訴えを退けるという極めて不当な判決を下した。
 爆音をまき散らし、周辺住民の人権侵害を今も続けている「世界一危険な基地」普天間基地は、即時に閉鎖撤去すべきである。しかし、この普天間基地の機能を辺野古地区へ移設したとしても、普天間基地の人権侵害状態を辺野古地区へ移転することになるだけであり、何らの問題解決にはつながらない。しかも、まともな環境アセスも行わずに辺野古沿岸部に新基地建設が強行されれば、ジュゴンをはじめとする貴重な自然環境も破壊されることは明白である。
 普天間基地は即時閉鎖・撤去するとともに、辺野古沿岸部にも国内のどこにも「代替施設」となる新基地を建設させるべきではない。そのために、JELFは、環境面における対等な日米関係を実現することで普天間基地における人権侵害状態を解消し、辺野古沿岸部への新基地建設を阻止することを引き続き取り組んでいく。

2) 2012年度の活動
@ JELFは2012年度次のような活動方針を掲げていた。
ア 普天間基地の被害実態、辺野古における自然環境破壊の可能性、さらには県内移設を許さないために嘉手納基地の被害実態などを広く訴える運動に参加していく。特に日本政府及び国会、米国政府及び同議会への圧力を強めるような行動につなげていく。
イ 対等な日米関係実現のための、日米安保条約・日米地位協定の改定問題については、引き続き内外の協力を得て、研究を進める。
A 2012年度活動は次のようなものであった。
ワシントンポスト紙への意見広告などを行うNGOグループであるJUCONと連携し、沖縄米軍基地問題についてのアメリカ国内での運動の可能性を協議した。


3) 2013年度活動方針
@ 政府が辺野古基地建設工事に着工するのを阻止するため、アメリカの弁護士と協力し、当該工事に着工するために必要な米軍の立入許可の差止め手続(injunction)をアメリカの裁判所において行う。
A 11月、JELF主催による辺野古のジュゴンに関する学術シンポジウムを沖縄で開催する。
B 引き続き、JUCONと連携し、沖縄米軍基地問題についてのアメリカ国内での運動の可能性を協議する。

 

第3 法曹養成について

1 はじめに
 2006年に新司法試験が始まり、その選択科目として環境法が採用されてから7年が経った。その間、環境法を専門的に学ぶ法科大学院生、さらに環境法を選択科目として選んで新司法試験に合格した弁護士が着実に増えつつある。しかし、一方で、環境法が新しい分野であるために、法科大学院によっては教師や学習教材、授業数が不足し、学習支援体制が不十分である等、法科大学院間で格差が生じという問題がある。このため、法科大学院によっては、学習支援体制の不足や勉強方法に関する情報の不足から、環境法自体には興味がありながら選択科目にはあえて選ばない学生が出てしまうケースも生じている。このような状況もあって、司法試験選択科目の中で、環境法の選択者及び合格者数は下から2、3番目の位置にあり続けており、司法試験受験者全体の割合から考えれば、環境法を学ぶ学生の数は伸び悩んでいる。このため、どの法科大学院にもいきわたる形での環境法の教育・学習支援体制の整備と充実が課題となっている。
 そこで、JELFでは、環境法に興味をもつ学生が、専門的に環境法を学び、また試験に合格した後も引き続き環境法の問題に専門的に取り組めるようにするための支援を行ってきている。特に最近の取り組みとしては、2008年度より論点表作成会議を発足して、学習支援のための論点表作成の取り組み等を行ったり、2010年度からは環境法の勉強会を行ったり、日弁連主催の環境法サマースクールの際に懇親会を開催したりして、環境法に興味を持つ学生、修習生、若手弁護士の交流も図っている。

2 2012年度の活動総括
1) 2012年度活動目標
2012年度は、2011年度までに実施した環境法勉強会の結果を踏まえ、改めて環境法の勉強会を実施するとともに、環境法の勉強支援のため、最近の法改正の状況も踏まえて、論点表の改訂を行うことなどを目標とした。
2) 2012年度活動実績
 2012年3月17日には、東京・大阪で勉強会を開催し、東京では79名、大阪では34名の人が集まり、盛況だった。
 また、7月・8月にも、法科大学院生対象の環境法学習会を大阪と東京で開催した。
加えて、8月24日・25日に東京で日弁連が主催する環境法サマースクールが開催されるのに合わせて懇親会を開催した。
 更に、10月から11月にかけて全国各地(東京・福岡・名古屋・大阪)において、合格祝賀記念勉強会を実施した。
 年末には、法科大学院生・修了生向けの答練も実施した。
 論点表についても、改訂作業を大幅に進め、充実した改定版を発行することができた。

3 2013年活動方針
1)2013年度は、2012年度までに実施した環境法勉強会の結果を踏まえ、改めて環境法の勉強会を実施するなどしていきたい。
 なお、すでに年末の法科大学院生向け答練は名古屋で実施し、10通近い答案添削の要望があった。
また、環境法勉強会は、3月の末に、場所は東京と大阪で開催した。東京会場では60名近くの法科大学院生・修了生が参加し、アンケートの結果も好評だった。大阪会場も同様に約30名の学生が集まり、「非常に勉強になった」「大変参考になった」等と好評だった。
2)今年の7月19〜21日には、環境派若手合宿と称して、山口県上関において、環境事件に興味のある若手弁護士を中心とした合宿を行いたいと考えている。自称若手の先生方には是非参加して頂きたい。
また、今夏も、日弁連が主催する環境法サマースクールが開催されるので、これにあわせた企画を考えていきたい。
 更に、秋には、合格者を対象とした合格祝賀会兼環境法勉強会(実際に事件を担当している先生の講演等)を実施したいと考えている。
 今後JELFの後輩育成にあたって中心となってくれるであろう修習生や学生を発掘しつつ、かなり充実した内容となった論点集のダイジェスト版の作成などを目指していきたい。
 更に、今までに参加してもらった弁護士や修習生の人達の環境問題に関する自主的な取り組みの支援、また、青年法律家協会や7月集会実行委員等の他団体の協力なども視野に入れていきたい。

 

 

第4 JELFの組織・財政について


1 JELFは、環境問題に取り組む法律家によって構成するNGOというユニークな存在である。2013年4月末現在、会員は弁護士会員506名、修習生会員28名(65期含む)、賛助会員79名、ロースクール会員94名である。
 JELFの組織活動としては、年1回の理事会、月1回の事務局会議(名古屋)を通じて、@時々の環境問題に関する意見表明、A「環境と正義」の発行を中心とした環境運動、訴訟など情報交換、Bロースクール生、修習生など次世代の環境問題に取り組む法律家を養成する活動に取り組んでいる。

2 2012年度から、大阪事務所の活動の活性化ために安定的な財源を確立することを目的として会費を1万2000円に増額した。
 2012年以降、大阪事務所では事務局会議が定例的に開催されるとともに、支部総会を開催するなどの取り組みが行われ、近畿地方におけるJELFの結集の場としての機能を発揮している。また、法曹養成の課題においても修習生対策の実務を分担するなどの活動範囲を拡大している。

3 しかし、会費の増額と弁護士業界全体に生じている売上減少などの影響を受け、弁護士会員の減少が生じていることは直視しなければならない。
 日常的な経費削減の努力を続けると主に、各地の環境訴訟や弁護士会の公害環境委員会などで活動している弁護士の中に相当数のJELF非会員がいることから、弁護士の中での会員拡大を重視して取り組む。
事務局会議の定例開催に引き続き努力する、大阪事務所の活動が軌道にのるように援助する。

4 JELFは、団体として、ジュゴン訴訟とシロクマ公害調停に当事者として参加している。
 今年度も、上記事件に取り組むとともに、今後も必要な事件については、理事会の承認を得て当事者として参加することとする。


 


最終更新日 : 2015 819