2018年09月26日

2018年9月10日、辺野古基地建設に関する学識者らの共同声明に賛同しました。

一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)は、2018年9月10日、『辺野古の海への土砂投入計画並びに新基地建設計画の白紙撤回を求める』学識者らの共同声明に対し、JELF理事長・池田直樹として賛同の連絡をしました。

共同声明に関するサイトはこちら(↓)のリンクからご確認下さい。
http://unite-for-henoko.strikingly.com/
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〈共同声明〉
辺野古の海への土砂投入計画並びに新基地建設計画を白紙撤回せよ!

 私たちは、沖縄の辺野古米軍基地建設をめぐる問題に重大な関心を寄せ、一昨年(2016年)9月9日付けで「沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!」を公表し、内閣府に直接提出した。以来、2年が経過しているが、その後も安倍政権は、私たちの要請を完全に無視したまま、辺野古新基地建設に向け強権的な対応をとり、辺野古の海への土砂投入を強行しようとしている。本年8月31日、沖縄県の謝花副知事は故翁長知事の遺志を継ぎ辺野古新基地建設に必要な埋立承認を撤回した。工事は現在停止されているものの、安倍政権は建設強行のため「法的措置を取る」と明言している。私たちは、安倍政権のこれらの暴挙に改めて強く抗議し、土砂投入を許さず、さらに辺野古新基地建設そのものの断念を強く求める。

1.沖縄県の埋立承認撤回を支持する
 国は、辺野古新基地建設を急ぐあまり、埋立承認の「留意事項」に違反して、埋立工事全体の実施設計についての沖縄県との事前協議を無視して工事を続行してきた。そして、公有水面埋立法4条1項の定める「国土の適正・合理的な利用、災害防止と環境保全に対する十分な配慮」という要件に違反して工事を続けてきた。それは、国が、本来、埋立承認にかかる設計の概要の変更許可を受けなければならない事態が頻発しているにもかかわらず(法13条の2)、「辺野古に基地はつくらせない」という故翁長知事の強い意志を前にして、その要件の遵守をないがしろにしてきたことに起因する。沖縄県が示した承認撤回の理由は、これらの問題を的確に指摘しており、沖縄県と沖縄県民の人権・自治・環境・平和を守ろうとするものであり、私たちは、このような沖縄県の埋立承認の撤回を断固支持する。

2.土砂投入は許されない
 ジュゴンをはじめ貴重なサンゴ・海草が生息する辺野古・大浦湾は、国(沖縄防衛局)が行った環境影響調査でも生物多様性のホットスポットであることが明らかであり、やんばるの森とともに世界自然遺産登録に値する貴重な自然である。人間居住の適地を基地に占拠され、やむなく為された埋め立てによってほとんどの自然海岸を失った沖縄にとって、辺野古・大浦湾の海は今や数少ない手つかずの自然であり、後世に残すべき沖縄の宝である。その辺野古の海への土砂の投入は、取り返しのつかない貴重な自然の破壊であると同時に、沖縄の声の無視であり、到底容認できるものではない。
 もし政府にとって日米安保条約に基づき新基地の建設が必要であるのなら、本土各県も基地負担を等しく受け入れるべきであって、国土面積の0.6%を占めるに過ぎない沖縄に米軍専用施設の70%を押し付けるのは「構造的沖縄差別」に他ならない。このことは、今や多くの沖縄県民の共通認識であり、もはや沖縄に新たな負担を強いるのは許されない。
 自他共に軍事の専門家と認めている森本敏元防衛大臣は、普天間代替基地は軍事的に言えば、日本の西半分のどこかであればよく、沖縄でなくてもよいが、政治的にはそうならないと述べた。まさに「構造的沖縄差別」である。埋立を律する法律である公有水面埋立法は、その第4条第1項で知事が埋立事業を免許・承認する際の条件を定めているが、その第1号はその埋め立て事業が「国土利用上適正かつ合理的なること」としている。軍事の専門家の上記の発言は、辺野古の埋立事業がこの条件を満たさないことを端的に物語っている。この一点のみをもってしても、辺野古埋立承認は違法というべきである。

3.8.11県民大会の決議を支持する
 辺野古の海への土砂投入が目前に迫った8月11日(土)、降りしきる雨のなか、7万人の沖縄県民が「土砂投入を許さない!ジュゴン・サンゴを守り、辺野古新基地建設断念を求める8.11県民大会」に参加し、土砂投入計画と新基地建設計画の白紙撤回を求める決議を採択した。私たちは、この決議を全面的に支持する。
 そもそも沖縄の人々は、各種の世論調査を通じて、また辺野古新基地建設の是非が争点となった各種の選挙において、辺野古新基地建設反対の圧倒的な民意を繰り返し示してきた。翁長知事は、そのような民意を背景に2014年11月の知事選において現職の仲井眞前知事を10万票近くの大差で破って選ばれ、4年足らずの任期中、民意の実現に向け全身全霊を捧げてきた。8月17日にも土砂投入を行おうとした国(沖縄防衛局)の通告に対し、知事権限である埋め立て承認の「撤回」の意向を7月27日に示した矢先に急逝された。そして、その遺志を継ぐことを誓う場となった県民大会に7万余の県民が集い、その背後にはさらに多くの県民が控えている。政府は、いまこそ、この県民の声に耳を傾けるべきである。
 ところが、安倍政権は、一貫して沖縄の声に耳を傾けないできた。翁長氏が知事に就任後、ただちに県民の願いを政府に伝えようとしたとき、安倍政権はそれを拒否し、安倍首相に面会することができたのは4ヵ月以上たってからのことであった。憲法第8章の地方自治の章で謳われているとおり、国と地方は対等であり、地方には自らのことを自ら決めていく自治権がある。このような地方自治の否定は日本の将来を著しく脅かすものであり、断じて許されない。

4.東アジアの平和構築に向けて
 普天間基地の辺野古への移設は、今から22年も前の1996年のSACO合意に基づくものであり、東アジアの情勢はその時とは大きく変化した。本年6月23日に開催された沖縄全戦没者追悼式において、翁長知事は、朝鮮半島の緊張緩和に向けた動きが進んでいるなかで、政府が進める米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設は「アジアの緊張緩和の流れに逆行している」と批判した。私たちは、故翁長知事のこの認識を共有する。
 朝鮮戦争の当事者である米朝間の交渉には、紆余曲折があるであろうが、東アジアの平和の実現に向けた歴史の流れを止めてはならない。朝鮮半島に歴史的責任を有する日本政府には、責任の自覚に基づく平和創造への積極的関与が求められる。
 朝鮮戦争が終戦となれば、在韓米軍、在沖米軍の位置づけが変わってくる。在韓米軍の縮小は、在沖米軍の重要度をむしろ高めるという議論もあるが、これを機に在沖米軍の縮小・撤廃に向かい、沖縄をアジアの平和交流の拠点に変えていくことが求められる。現在、南西諸島では辺野古・高江での米軍基地建設に加え、自衛隊配備により全域での軍事要塞化が進められているが、これは安全保障のジレンマにより周辺国との軍事エスカレートの罠に陥る公算が強く、時代の趨勢に逆行するものである。
 私たちは、東アジアの平和構築に寄与する意味においても、辺野古新基地建設の白紙撤回を強く求める。

2018年9月7日