2019年03月15日

2019年3月13日、鹿児島県大島支庁建設課に「嘉徳浜護岸工事に関する要望書」を提出しました。

 2019年3月13日、JELFは、鹿児島県大島支庁瀬戸内事務所の建設課に対し、奄美大島の「嘉徳浜護岸工事に関する申入書」を提出いたしました。
 提出した意見書は、PDFファイルでも掲載しています。ご確認ください。

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平成31年3月 13日

鹿児島県大島支庁瀬戸内事務所 建設課御中

一般社団法人 JELF(日本環境法律家連盟)
名古屋市中村区椿町15-19 学校法人秋田学園名駅ビル2階
理事長 弁護士 池田直樹

嘉徳浜護岸工事に関する要望書

 

 現在,鹿児島県瀬戸内町所在の嘉徳浜で着工が迫っている護岸工事(以下「本件護岸工事」といいます。)について,以下のとおり,要望します。

1 現在,着工が間近に迫る本件護岸工事について,嘉徳集落の住民を中心に鹿児島県に対する住民訴訟の提起を予定している。嘉徳浜は,地形や生態系,景観及び社会的価値において,固有の高い価値を有しており,コンクリートを用いた不可逆的な手法による護岸工事にあたっては,慎重にその必要性及び方法の妥当性が検討されなければならない。

2 もっとも,平成26年の台風に基づく嘉徳浜の浸食により,何らかの対策が必要とされる点については,強く否定するものではなく,コンクリートを使用しない対策の検討を切望している。代替案については,Eco-DRRと呼ばれる環境省推奨の自然生態系を生かした防災対策を検討すべきであり,具体的には以下の通りである。実際に嘉徳集落と嘉徳浜の間に位置する墓地等浸食に晒されている部分については,鋼矢板の埋設を最小限実施し,その上及び前後に砂をかぶせ,アダン等の海岸植物を植栽することで砂丘を補強する。また,その他の部分に関しては,自然な砂の堆積回復を待つのみならず,その浸食の度合いに応じて矢板あるいはアダンの植栽による養浜を実施する。矢板を使用する方法であれば,住民らの不安の解消までの期間も極めて短時間で行うことが可能であり,また,アダン等の海岸植物には,砂をトラップすることでその場に保持する機能があり,これに基づく養浜の進捗に応じて,撤去も検討しつつ完全な自然状態に戻すことも容易である。なお,浸食により砂が減少した事実のみならず,砂浜が浸食と堆積を繰り返しており,現在かなりの程度で砂浜の堆積回復が認められているという点を考慮し当該代替案を提案するものである。
 以上のように矢板で,砂丘の一定以上の浸食を物理的に防ぎ,自然海岸の景観を壊さないように砂をかぶせることで,住民の不安解消と自然なままの嘉徳浜の保全の対策が両立できる。

3 よって,直ちに工事を一時的に延期した上で,浸食対策事業検討委員会を再開し,前述のコンクリート護岸を使用しない代替案,砂浜の堆積回復について更に多くの専門家等の意見を踏まえた上で検討することを要望する。

4 更に,本件護岸工事について市民と行政の間で十分に協議がなされていないため,平成31年3月18日の本件護岸工事着工以前に改めて幅広く市民と直接対話をするための協議会を開催することを求める。

以 上