2026年03月17日

2026年3月17日、環境省に「環境表示ガイドライン」の改定案に対する意見を提出しました。

 一般社団法人JELF(日本環境法律家連盟)は、2026年3月17日、『「環境表示ガイドライン」の改定案に対する意見』を、環境省環境経済課 環境表示ガイドライン担当に宛てて、提出しました。
 提出された意見書は以下の通りです。

 資料:環境省パブリックコメントについて
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環境省 大臣官房 環境経済課 環境表示ガイドライン担当 御中
 
一般社団法人JELF 理事長 島昭宏
460-0003
 名古屋市中区錦3丁目5番30号 三晃錦ビル6階
 電話番号:052-746-9006
 メールアドレス:jelf@green-justice.com

「環境表示ガイドライン」改定案に対するパブリックコメント
 
はじめに
 今回の改定は、近年の国際動向の動向を踏まえたものであり、国際水準への適合をもって国際競争力を損なわないための指針となる。また、適切な環境表示により情報提供を行うことで消費者の購買行動を促すものである。本改定案は評価すべき点もあるものの、日本の国際競争力確保や消費者行動促進にとって不十分な点がある。
 今回の環境表示ガイドライン改定が「国による、うわべだけのグリーンウォッシュ対策」とならないよう、以下意見を述べる。
 
意見の内容
 
意見1 法的実効性の段階的強化
 
改定案の該当箇所
ガイドライン全般
 
意見
 ガイドラインの内容を景品表示法の解釈に読み込む運用及びこれを推進するための法改正の検討、ガイドラインの内容を法的義務とするグリーンウォッシュ新法制定の検討、問題事例の公表・蓄積、消費者庁との連携強化など、規制の実効性を段階的に高めていくための継続的な取組みを求める。
 
意見の理由
 現在、日本の環境表示規制は、主として企業の自主的な取り組みに委ねられている側面が大きい。しかしながら、市場において使用されている環境表示の現状を見ると、あいまいで根拠に乏しい表現が多用されるなど、単に自主的な取り組みを促すだけではグリーンウォッシュのもたらす社会的な悪影響を防止するためには不十分であることを示す例が散見される。
 EUなどの先行地域においては、環境訴求に対する法規制の強化及び摘発が進んでいる。
 日本においても、一足飛びにハードローによる規制へと移行することは困難としても、段階的に規制の強化を進めることが肝要である。
 
意見2 企業レベルの環境表示に関する独立した章の設置
 
改定案の該当箇所
第3章3-2(5)企業姿勢、イメージ広告、銘柄名等に対する要求事項
意見
 企業レベルの環境表示について独立した項目を設け、問題となる具体的事例とともに、こうした表示の何が問題かを明確に示すことを求める。
 
意見の理由
 日本国内においては、2050年に向けて企業全体の姿勢に関する根拠の乏しい環境表示が特に多くみられ、消費者に誤認を与えやすい状況になっている。 
 EU消費者エンパワーメント指令(Directive 2024/825・2026年9月適用)では、企業レベルの曖昧な表示も消費者向けの商行為において禁止されているところ、国内においても、環境表示の適正化のためには企業レベルの環境表示についての問題意識を高めることが不可欠である。
 現在の改定案では第3章3-2(5)に企業姿勢等への要求事項が記載されているものの、その記述は極めて簡潔である。直ちに景品表示法の対象とすることが困難であっても、こうした表示が問題であることを明示し、具体的な留意事例やあるべき表示の例を示す独立した項目の設置を提案する。
 
意見3 自主ラベルに関する原則的立場の明確化
 
改定案の該当箇所
第3章3-2(4)シンボルの使用に関する要求事項
 
意見
 「自主ラベルは原則として推奨されない」旨を明記したうえで、使用する場合の最低要件を具体的に示し、問題事例と適切な例を付記することを求める。
 
意見の理由
 現在、市場には認証基準が曖昧・非公開であったり、事業者自身が設定した高いとは言えない水準の基準に自ら「認定」するような形式の自主ラベルが多数存在し、消費者の環境に配慮した商品・サービスに関する選択を歪めている。
 EUの消費者エンパワーメント指令(Directive 2024/825)は、認定された認証スキームまたは公的機関によらないサステナビリティラベルの使用を禁止する。すなわち、同指令の適用範囲においては自主ラベルは原則として認められない方向性が既に法定されている。これに対し、日本のガイドラインは、現在も自主ラベルについて「使用する場合の要件」を示すにとどまり、乱用への抑止が不十分である。
 「自主ラベルは原則として推奨されない」という立場を明確に打ち出すことで、事業者に対する明確なメッセージとなる。また、ガイドラインの記載がわかりにくいことが意図しない乱用を招いている側面も否定できず、具体的な事例の提示が不可欠である。
 
意見4 業種別・類型別手引書の整備
 
改定案の該当箇所
第3章3-3 国際規格(ISO/JIS Q 14021規格)の要求事項に係るチェックリスト及び全体の構成
 
意見
 実務担当者が適否の判断時に参照しうる、業種別・類型別に実例を豊富に盛り込んだ詳細な手引を整備することを求める。
意見の理由
 グリーンウォッシュは悪意ある事業者によるものだけでなく、担当者がガイドラインの内容を十分に理解せず、あるいは判断に迷って結果的に問題のある表示を行ってしまうケースも少なくない。その意味で、今回の改定案にビジュアルを用いた具体例が加わったことは大きな前進であり、積極的に評価する。
 もっとも、現状の改定案は未だ規範的な要求事項の記述が中心であり、「自社の広告・製品表示がこのガイドラインに沿っているか」を担当者が自信をもって確認するためのツールとしては不十分である。また、特に中小の事業者においては、自社においてこれを適正化するためのリソースにも乏しい。
 このような状況を改善するため、例えば、食品・繊維・エネルギー・自動車・金融等の各業種に特有の環境表示の問題点や、「再生可能エネルギー」「リサイクル」「生分解性」「カーボンオフセット」等の類型別の確認事項をまとめた詳細な手引を作成し、ウェブサイト上で提供することを提案する。
 
意見5 海外規制情報の積極的な提供
 
改定案の該当箇所
別冊参考情報及び第1章1-1(策定の経緯)
 
意見
 各国・地域の法令・執行事例・関連リンク集のさらなる充実を求める。特に、海外での実際の摘発事例と処分内容を具体的に紹介することで、事業者の意識向上につなげていただきたい。
 
意見の理由
 別冊参考情報における海外動向の紹介は評価するが、多くの事業者においてその実態はまだ十分に認識されていない。 例えば、EUの消費者エンパワーメント指令(Directive 2024/825)は2026年9月から適用され、違反には制裁金が科される制度となっている。英国CMА(競争市場庁)はASOSやBoohoo等への調査を行い、改善を確約させている。イタリアではエネルギー大手に対して500万ユーロの罰金が科された事例もある。EU・英国・米国・オーストラリア等の関連法令や摘発事例へのリンクをまとめるだけでも、日本と海外の規制ギャップを可視化でき、事業者の危機意識向上と自発的改善につながる可能性がある。

 また、海外市場に関わる日本企業の法令遵守体制の構築を支援するという観点からも、積極的に情報提供の役割を担うことを求める。