2017年08月28日

沖縄ジュゴン米国訴訟、米国連邦高裁の差し戻し判決に関する声明文

2017年8月21日、米国第9巡回高等裁判所は、沖縄県辺野古の基地建設をめぐる沖縄ジュゴン訴訟に関し、JELFをはじめ、沖縄の3名の個人原告、米国環境NGOの生物多様性センター(Center for Biological Diversity/ CBD)を含む日米の環境NGO等、私たち原告側の主張をみとめる判断を下しました。

同訴訟の原告であるJELFは、この控訴審の判断を歓迎する声明を発表します。

この控訴審の判決文、また、控訴審で提出された書面については、具体的な取組みの中の基地問題一覧のページからご確認ください。

_____________________

 

声 明 文

2017年8月28日

日本環境法律家連盟(JELF)

理事長  池田 直樹

 

1.  2017年8月21日、米国第9巡回高等裁判所は、辺野古基地建設に関し、原告らが、米国政府を相手として、NHPA違反の違法確認と建設関与の差止を求めていた裁判につき、原告適格等を否定した地裁判決を破棄し、審理を差し戻すとの判決を下した。

2.  2003年、日本環境法律家連盟(JELF)は、米国環境保護団体(Center for Biological Diversity/ CBD)と共同してNational Historical Preservation Act(NHPA/国家歴史的財産保全法)に基づく訴訟をサンフランシスコ連邦地方裁判所に提訴した。NHPAは、世界遺産条約の執行法でもあることから、米国政府は、自国のみならず他国の文化財も保護する義務を負う。ジュゴンは日本の文化財保護法に基づく国の天然記念物であるから、米国政府は、辺野古基地建設に際し、NHPAに基づき適切なジュゴン保護手続きを行わなければならない。そこで私たちは、本訴訟を通じて、米国政府が、NHPAを遵守し、沖縄ジュゴン及び辺野古新基地周辺の自然的、文化的環境を保護することを求めてきた。 

3.  2008年、サンフランシスコ連邦地方裁判所は、米国政府が辺野古基地建設に当たり行ってきたジュゴン保護手続きは違法であるとする画期的な中間判決を下した。しかし2015年の同地裁判決は、米国政府による同時点でのジュゴン保護手続きの違法確認請求につき原告らの原告適格を否定し、また適切なジュゴン保護手続きを履行するまでは基地建設を差止ることを求めた原告らの請求に対しては、司法による政治介入を避ける政治問題の法理を理由に訴訟要件を否定し、いずれの請求についても却下したため、原告らは直ちに連邦第9巡回高等裁判所に控訴した。

  このたび、同高等裁判所は、原告適格を認めた上で政治問題の法理は本件に適用されないとして、いずれの請求についても訴訟要件を認め、原審を破棄し原審への差し戻しを命じた。私たちは、法の正義を貫き実体審理への途を開いた今回の判決を歓迎する。

 今後、地方裁判所で審理が再開されることになるが、米国政府によるジュゴン保護手続きが違法であったことは過去にも認められているところであり、差戻審においても、この点は揺るがないと考える。私たちは、米国政府のNHPA違反を根拠に、今後、差戻審において、米国政府にNHPAの遵守を求め、ジュゴン保護手続きが終了するまでの間、ジュゴンに直接影響有る行為を禁じること、すなわち、日本国政府のキャンプシュワブに立ち入りに許可を与え、基地建設行為に加担することを中止するよう、強く求めていく。

4.  辺野古沿岸部及び大浦湾は沖縄県内でもたぐいまれな自然度の高い地域であり、そのことはジュゴンの生息やアオサンゴの巨大な群落が存在することにも象徴されている。日本環境法律家連盟(JELF)はかねてより、沖縄の豊かな自然的、文化的環境の保全を求めて辺野古基地建設の中止を求めてきた。

 沖縄には日本全体のアメリカ軍専用施設の約70%が集中し、沖縄本島の18%を占めており、沖縄県は過重な負担を強いられている。更に新たな基地建設によって、環境破壊が進むことは、環境的正義に反するものであり、私たちはこれに断固反対する。

5.  私たちは、米国第9巡回高等裁判所の判決を受けて、沖縄における環境的正義を守り抜く決意を新たにするとともに、日米両国政府が、違法な辺野古基地開発を直ちに中止し、沖縄の自然的、文化的環境を守るための最善策をもとめて沖縄県、名護市、地域住民、環境保護団体、研究者など広範な意見を求めて真摯に対応することを求めるものである。

以上