川は水を集めながら源流から下流へ、やがて海へと流れ、山のミネラルや土砂を運びます。流域には湖や干潟、湾などの湿地がつくられ、そこにすむカニ、エビ、貝や虫などを求めて鳥が飛来します。鮭、鱒などの川を上る魚は熊などに食べられることによって海のミネラルを森にもたらすということも明らかにされています。このように、川の流れがつくりだす生命の循環、自然の恵み(生態系サービス)は私たちにさまざまな豊かさをもたらしてきました。

 他方で、コンクリートのダムや堰(せき)、埋立や干拓などの開発もまた、私たちに一定の便益をもたらすとされ、特に日本の人口が右肩上がりに増えてモノに対する需要も大きく工業化がすすんだ高度成長期以後、開発のための法(開発法)が多くつくられ、急激な開発による環境破壊がすすみました。工業用地などをつくるための埋立や干拓は、沿岸域の生物の生息域を破壊してしまいます。渇水対策・水害予防のためのコンクリートのダムや堰はアユやウナギなどの遡上を妨げるだけでなく、土砂をためこんで海岸後退などの問題も引き起こしています。

 時代がかわり、日本の人口が減少傾向へと転じ、モノに対する需要も縮小する成熟社会となり、開発の必要性が失われる一方で、地域の恵みを活かした経済などのため、自然環境の価値はますます高まっています。しかし、環境をまもるための法(環境法)の整備が日本では遅れています。例えば、環境法の根幹を定める「環境基本法」には「環境権」が定められていませんし、「開発」側と「環境保護」側がコミュニケーションをするための環境アセスメント手続を定める「環境影響評価法」は、「環境保護」側が手続についての異議申立をする権利を認めていません。

 強い開発法と貧弱な環境法のもとで川や海の環境保護を実現することは簡単なことではありませんが、JELFの会員は、環境法だけではなくさまざまな法制度を駆使して、必要性の失われた開発の中止・見直しを実現して川や海を守るための取り組みを続けています。

 

(中止・見直しを求める取り組みの対象となった主な事業)

辺野古大浦湾埋立事業(沖縄県)、諫早湾干拓事業(佐賀県など)、二風谷ダム事業(北海道)、成瀬ダム事業(群馬県)、長良川河口堰事業(愛知県)、設楽ダム事業(愛知県)、永源寺第二ダム事業(滋賀県)