EU(欧州連合)諸国では、環境、経済、社会の三つの分野が持続可能なものでなければならないと一般的に考えられています。このような「持続可能な社会」は、堅実な地場産業に経済の基盤をおき、環境や資源を浪費せず、住民の自主的活動、助け合いのネットワークなどに支えらえれた社会であると言えます。わが国の環境基本法第4条も、「持続可能な社会」を目指しています。

 ところで、わが国の現状はどうでしょうか。EUで提唱されている「持続可能な社会」とは逆の方向へ向かっていると言っていいでしょう。国レベルの国土形成計画では、量的拡大から成熟型社会へ、また、国主導から分権型計画へ、という大きな転換が示されたものの(1970年の公害国会でも「国民生活重視・福祉優先」が宣言されています)、東日本大震災後に主張された国土強靭化のスローガンや、東京オリンピックの開催決定によって、以前の「土建国家」に逆戻りしています。

 人々の健康で文化的な生活よりも金銭的利益を優先する都市開発のひずみは、近時の空き家問題の原因にもなっています。2013年の「空き家」の数は全国で318万戸、空き家の数の最も多いのは大阪府、次いで東京都、兵庫県です。空き家を一律に更地や駐車場にするだけでは、まちは崩壊するばかりです。都市環境問題という視点から、空き家問題(マンション空き家も含む)に取り組む必要があります。

 私たちは、日照阻害、景観破壊や道路問題など個々の紛争事案の解決に努力するとともに、「持続可能な社会」の実現に向けて、国レベルの法律改正、地方レベルの条例改正などの取組も市民やNPOの方々と連携したいと考えています。