日本環境法律家連盟2000年度活動方針・活動報告

[トップページに戻る]2003.04.20更新


日本環境法律家連盟とは 

活動方針・活動報告

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■ 2000年度活動方針    2000年度活動報告  <活動方針の後にあります>

(1) 国内自然保護
 国内の大規模自然破壊のほとんどが公共事業によってもたらされています。そこでは(1)アセスメントの欠如、(2)効果 が疑問視される公費の浪費、(3)情報公開、市民参加手続きの欠如と共通の論点が含まれています。連盟ではこれらの事実が違法性と結びつける努力を裁判、シンポジウム等を通 じて続けてまいりました。
 特に「費用便益分析」と言われる分野について検討を進め、各地の裁判、運動に生かしてまいりたいと思います。公共投資の分野における「費用便益分析」とは、公共事業を実施する際には投資する費用を上回るだけの便益、効果 がえられなければならないとするものです。
 たとえば、長良川では防災、利水の効果が疑問視される中、河口堰事業は強行されました。長崎県諫早干拓事業では現在投資額が防災効果 、農地造成の効果をはるかに上回っていますが、工事は止められることなく続いています。
 無駄な公共投資が無駄であるという理由で地方自治法などが定めている会計原則になり違法となると考えられます。しかし、この「無駄 」の解明には専門知識と、公共事業に関する情報が必要となります。連盟では専門家と協力を得つつ、各地で展開される環境訴訟で得られる情報などを利用しながら公共事業をやめさせるための実践的手段を検討します。

(2) 有害物質汚染
 ダイオキシンなどの有害物質汚染が心配されています。廃棄物処理施設による環境破壊を理由に多くの施設が裁判によって建設を差し止められたり、操業が禁止されたりしています。廃棄物問題は消費こそが繁栄であるという価値観の変革を迫っています。生産から消費に至るまでのあらゆる部分に新たな変革が求められています。
 廃棄物は人間の生産活動に伴って必ず生じてしまうものであると認識しています。「循環」という考えが浸透していってもこのことは変わらないであろうと思われます。いらなくなったもの、有害なものは社会的、経済的な弱者にしわ寄せとなって現れてくることでしょう。廃棄物処理施設が農山村や、人のいない干潟に建設が進められることもこのことと無縁ではありません。本当の「循環型社会」では廃棄物を生み出すあらゆる場面 で市民、地域じゅうみんが事実を知り、不正を是正するチャンスが与えられる必要があります。
 現在、私達の会員は全国各地で廃棄物最終処分事件、廃棄物焼却場事件に取り組み成果 をあげています。私たちは全国各地の裁判を支援するため、廃棄物処理場事件関係の資料を提供すると共に、廃棄物処理事件の情報交換を進めております。また、住民運動と弁護士との交流を進めるために地域でシンポジウムを開催したり、弁護士のあっせんをしております。
 さらに、「循環型」社会を目指す市民運動と広く連帯して活動を進めていく予定です。

(3) 国際環境問題
 地球温暖化問題、砂漠化問題など地球環境に関する課題はさまざまありますが、連盟では多国籍企業による環境破壊の問題に特に関心をもちながら活動を進めています。特に日本本籍の多国籍企業の活動のコントロール、ODAなどの問題についても私達は関心を持っています。各国の自律、とりわけ国際的な発言力の弱い国の自律を確保する上でも国家主権、国境は重視されなければなりません。一方で、環境、人権の課題は国境を越えて幅広い人々が連帯して解決することが求められています。多国籍企業が現地で法人を作り、環境破壊を進めようとしているとき、国境を越えた連帯によって環境破壊を防止する運動が必要なわけです。私達はこうした国際的な人権の課題、環境的正義の課題に敏感でありたいと考えています。

(4) 沖縄ジュゴンの保護
 1999年11月に沖縄県知事は普天間基地移設先に名護市辺野古沿岸域を選択しました。これは、基地受け入れを巡る住民投票の結果 に反するものでした。この辺野古沿岸区域は日本のジュゴン最後の生息地でもあります。ジュゴンは我が国には数十頭しか生息しておらず絶滅が危惧されています。連盟ではこの問題を重視し、自然環境保護の立場から辺野古基地建設に反対しています。また、特別 に予算をつけて沖縄ジュゴン問題に取り組むこととしました。具体的には国内法、国際法上の問題点を検討すると共に、米国種の保存法(ESA)の利用も考えことにしています。ESAは米国環境保護法の中でも最も強力な法律で、その中には市民訴訟条項があって、外国人も含めて誰でも種の保存のために法を利用ができるとされています。沖縄ジュゴンはESAで保護の対象とされていますのでこの法の活用が可能になるのです。

 

2000年度の活動報告

 連盟では機関誌「環境と正義」を毎月発行したほか、電子メールによる環境情報の提供、各地の弁護団への資料提供などを進めてきた。ホームページも開設された。
 今期活動の特徴は次の通りである。
 (1) 修習生対策に力を入れた。サマーセミナーは公害弁連とともに実施した初の試みである。
 (2) エコツアーとして、海外旅行を実施した。
 (3) 沖縄ジュゴン保護活動は連盟自らが取り組む初の環境事件である。沖縄でのシンポジウムは世界自然保護協会日本委員会(WWF-J)と共催した点でも意味がある。
 (4) 全国ダム訴訟交流集会を実施した。
 (5) WTO問題について十分な活動が展開されていない。

05/06〜05/07  連盟総会(東京)。高尾山セミナー
  連盟総会とともに建設省が計画している高尾山圏央道に反対したシンポジウムを実施した。首都圏を囲うようにして建設されつつある高速道路は高尾山を貫こうとしている。シンポジウムでは環境訴訟における訴訟の意義、高尾山にて訴訟を実施する意義などについて論議された。高尾山「自然の権利」訴訟のきっかけとなった。
06/04〜06/10  サマーセミナー「カナダ、クーンシャーロット島ツアー」
カナダ西海岸北部クイーンシャーロット島を訪問した。明治学院大学の辻信一先生にガイドしていただき、当地の先住民であるハイダ民族と交流した。ツアーでは北方の温帯雨林の豊かな自然を楽しむとともに、皆伐現場を視察した。ハイダ族は民族のアイデンティティをかけて原生林の伐採に反対している。カナダ政府に対しては民族の領有権を巡って訴訟を展開し、多くの勝訴を勝ち取っている。ツアーではハイダ族の代理人に就任している弁護士や環境問題専門のローファームとも交流した。
07/14〜07/16  修習生対象サマーセミナー(公害弁連共催)
  連盟修習生会員を中心に修習生を招待して箱根にてセミナーを開催した。公害関係からは熊本県板井優先生に水俣病訴訟の経過を、自然環境関係からは東京都坂元雅行先生に自然保護活動の実際を、国際環境問題ということで東京都小島延夫先生に講師となっていただいた。修習生の評判は上々で多くの修習生が入会した。また、その後の後期修習での修習生の活動の弾みとなった。
11/02〜11/04  連盟理事会(長野県)、全国ダム訴訟交流集会
  ダム開発が公金の無駄遣いであり、深刻な自然破壊をもたらすものであることは国民の前に徐々に明らかになりつつある。全国各地で多くのダム訴訟が展開されており、費用便益が重要な争点として展開しつつある。連盟では長野理事会にてダム問題を取り上げた。前日にはシンポジウムを開き、市民200名ほどの参加を得た。翌日は集会を開催するとともに、弁護団交流会を実施した。ダムに関する情報を集中するとともに今後の全国的な連携の礎を築いた。
12/02    ジュゴンシンポジウム(沖縄):WWF-J、「自然の権利」基金共催
今期総会の方針を受けて連盟は沖縄ジュゴン保護のためのリーガルアクションを展開している。その一つしてESA研究会を設けて米国種の保存法を利用した訴訟を準備している。今回のシンポジウムは研究会の成果 を報告したものである。連盟の活動は集会前から地元紙に大きく報道されていたため、当日は250名程度の市民の参加を得た。その後も連盟の活動については沖縄県内では詳しく報道されている。
2001/02/25    ジュゴンシンポジウム(名古屋)
  同じく連盟の方針を受けて、名古屋で「沖縄の心と『自然の権利』」シンポジウムを実施した。シンポジウムでは沖縄の信仰、習俗などとジュゴンとの交わりが報告され、沖縄ジュゴン保護運動が沖縄のアイデンティティを守る運動であることをアピールした。