2018年06月15日

第5次エネルギー基本計画(案)に対するパブリックコメントを提出しました。

2018年6月15日、JELFは資源エネルギー庁による「第5次エネルギー基本計画(案)」に対するパブリックコメントを提出しました。以下、JELFが提出した意見を掲載します。

パブコメの詳細は、以下のリンクをご参照下さい。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/public/
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<意見>

パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を

第1 本パブリックコメントの骨子
1 原子力発電所の稼働,新増設を前提とするのではなく,原子力からの脱却を前提とする計画とすべきである。
2 石炭火力発電からの脱却を明確に位置付けるべきである。
3 2030年の電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を30%以上に引き上げるべきである。
4 省エネ対策の一層の強化及び野心的な炭素の価格付け政策を早急に導入するべきである。

 

第2 各論
1 はじめに
 エネルギー基本計画の内容は,地球温暖化対策の観点から、脱炭素を目指すパリ協定と整合したものにするべきである。また,2011年3月11日の福島第一原発事故の経験から,原子力依存からの脱却も重要である。
 しかしながら、第5次エネルギー基本計画案は,「2030年のエネルギーミックスの確実な実現」を目指すとし(12頁),2050年に向けては,技術革新等の不確実性,不透明性を強調して,「あらゆる選択肢の可能性を追求する野心的なする複線シナリオ」を採用する(94頁)としており,基本的に、原子力発電と火力発電を「重要なベースロード電源」とする現行計画を踏襲したものとなっている。
 かかる第5次エネルギー基本計画案は、以下の視点から,抜本的な見直しが必要である。

2 原子力発電について
 第5次エネルギー基本計画案では,原子力を「現状,実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置付けた上で,「長期的なエネルギー需給の安定化に寄与するベースロード電源」と記述し,「社会的信頼の回復」が2050年に向けての課題であり,「人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手し,安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求,バックエンド問題の解決に向けた技術開発を進めていく」とし,原子力の依存度についても,「経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で,可能な限り原発依存度を低減する」と言うにとどまり,依存率を低減させるとの方向性は明確でない。
 2011年3月11日の福島第一原発事故を経験した我が国では、原子力発電所の稼働,新増設を前提とするのではなく,原子力からの脱却を前提とする計画とすべきである。

3 石炭火力発電・脱炭素化政策について
 第5次エネルギー基本計画案では,石炭を「重要なベースロード電源」かつ「活用していくエネルギー源」とし,国内外で石炭火力のリプレースや新増設を推進する方針を継続している。
 しかし、石炭火力は,二酸化炭素の排出量は天然ガスの約2倍にも及ぶエネルギーである。
 世界の平均気温を産業革命前と比べて2℃未満の気温上昇に抑え,1.5℃以内にとどめるよう努力するとのパリ協定の目標を実現するには,今世紀後半までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにしなければならない。そのためには、第5次エネルギー基本計画で、石炭火力からの脱却を明確に位置付けるべきである。

4 再生可能エネルギーの目標引上げと導入推進策について
(1)再生可能エネルギーの比率引上げ
 国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば,2015年に導入された設備からの発電量は90%以上が再生可能エネルギーであった。パリ協定の下,企業や自治体では,さらに,再生可能エネルギー100%への動きが高まっている。
 我が国は再生可能エネルギーの賦存量に恵まれた国であり,環境省の2015年調査報告書によれば,現状の電力需要を前提としても,2030年に再生可能エネルギーの割合を発電電力量の24%~35%とすることは可能とされている。
 我が国でも,2050年までに温室効果ガスの排出量を80%削減するとの長期目標を整合的に達成するためには,2030年の再生可能エネルギー導入目標の大幅な引上げと実現のための適切な政策が必要である。
 ところが、第5次エネルギー基本計画案では,再生可能エネルギーの「主力電源化を目指す布石を打つ」との記述が盛り込まれているが,2030年の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合は,2030年エネルギーミックスで示された22~24%のままであり,2050年の目標も示されていない。

(2)再生可能エネルギーの導入促進のための制度改革
 国内に充分な賦存量を有する国産エネルギーである再生可能エネルギーこそ,苛酷事故のリスクもなく,地政学的な影響も受けにくい,安価で安全で安定した電源となり得るものである。
 したがって、再生可能エネルギーの系統への接続を優先するなど,再生可能エネルギーを拡大するための方策を広く活用すべきである。
 とりわけ,発送電の分離については法的な分離では不十分であり,所有の分離を原則とするべきである。その上で,ベースロード電源市場や容量市場といった市場ではなく,公正な電力取引市場を整備し、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを優先的に利用することは,経済的合理性にも適合する。
 また,既存送電網を有効活用し,最大限再生可能エネルギーの接続を可能とするよう速やかに運用を改めるとともに,地域分散型再生可能エネルギーの最大限の利用に向けた送電網整備については,検討ではなく,早急に計画を具体化するべきである。
 そして、再生可能エネルギーの新規参入の足かせとなっている電力系統線の増強・接続費用については,情報公開を徹底し,枝線を除いては利用者負担とすべきである。

5 省エネの位置付けの強化及び野心的な炭素の価格付け政策について
 省エネ対策は、単に他のエネルギー源と並列するのではなく,エネルギー供給に優先して省エネを位置付け,これを推進するべきである。
 国内排出権取引制度や炭素税の導入は省エネのための積極的な経済的インセンティブとして有効である。発電所や一定規模の排出量を有する大規模工場等については,早急に義務参加型キャップ&トレード方式の国内排出権取引制度を導入し,事業者に当該業種トップ水準のエネルギー効率に移行する省エネを促すとともに,気候変動対策として実効性のあるものにするため適切な炭素税を策定するべきである。

以 上